革の3Wayバッグを作る / バッグを知る【3Wayバッグ開発2】

前回、初めてデザインした革の3Wayバッグの試作品に触れて、感動しすぎて詳細な分析ができなかったので今回はじっくりと分析。

最初はこんなものかと思う反面、平面のバッグのデザインが立体的になったことで理想と現実のギャップはもちろん、バッグってこうなってるんだとあらためて実感。

ここから何度も試作を繰り返して革のバッグづくりの難しさを体験し、PCが入る革の3Wayバッグを作り上げていきます。

デザインしたバッグを手にして感じるバッグをつくることの難しさ

革の3Wayバッグの最初の試作

使い方を考えた3Wayのポケットの位置。多ければいいというものでもない

moeの革の3Wayバッグ「urchin」。最初の試作をじっくりと分析。

まずは外観のポケットなどの機能やリュックスタイルを中心にレビューすることにしました。

まずは正面(写真参考)。気になったのが正面左側下のマチの付いたポケットです。

ポケットの底やマチを大きくとったので収納物がない状態だとかなり形がくずれてしまうのが目につきました。

同じ面にファスナー式のポケットがあるので異なるタイプのポケットにしました。

携帯式の充電器や電源ケーブルの収納にでも使えると思ったのですがポケットのマチ(幅)が大きくてだらしない感じに。

スタッフからは「弁当箱」と揶揄されるポケット。われながらイケていないと感じる有り様でした。

続いて両側のサイドポケット。バッグのマチ側にもポケットがあれば便利かと思いデザインしましたがポケットの底が浅く中途半端。

ポケットの位置が肩掛け用のショルダーストラップの取付け金具の下なので、深くしようとすると金具が邪魔に。

3Wayバッグは収納を意識して内側、外側でポケットを多く取り付けたいと思ったのですが、この感じではサイドポケットは機能しそうにないので裏側にポケットを設置するほうがいいようです。

ビジネスバッグで使うならポケットがたくさんある方が便利と考えて3Wayバッグをデザインしたのですが、取付位置や用途も考えないと使いにくくなってしまいます。

革の3Wayバッグの最初の試作の裏側

ショルダーストラップを使った3Wayバッグのリュックスタイルの仕様

3Wayバッグのリュックスタイルの切り替えは、バッグに付属するショルダーストラップを使ってスタイルチェンジします。

バッグ本体の両サイドに取り付けているショルダーストラップを外して、ストラップの片側をバッグの底あたりにあるD管とよばれる金具に固定します。

そして、ショルダーストラップをバッグの裏側の持ち手の付け根部分にあるガイドに絡めて通し、もう一方のD管の金具に取付。

こうすればバッグ裏面の持ち手部分のガイドを中心にしてリュックとして背負う時の腕を通すストラップになります。

リュックとしての仕様の確認はできましたが、バッグ本体の底部分にあるD管の金具が床面を傷つけそうな感じが気になりました。

持ち手部分に設置したストラップを絡めるガイド部分についても金具のカシメが補強対策もあって数が多く、ガイド部の幅が小さいように思いました。

ガイド部も少し遊びが欲しいし、サイズを大きくしたほうがデザイン的にもはっきりして良さそうですね。

ポケットなど外観の変更と5Wayバッグへの挑戦

試行錯誤の革の3Wayバッグの2回目の試作

ポケットやリュックスタイルの切り替えなどを中心とした1回目の試作の分析を元に2回目の3Wayバッグの試作を行いました。

2回目の試作で、バッグ正面の弁当箱とよばれたポケットをマチがない標準的なポケットに変更しました。

マチがあれば充電器などの小物を収納できると思ったのですが、実際に使うと壁などに接触しやすいという意見がありました。

デザイン的にもいまひとつだったので標準的なポケットにしたのですが見た目はスッキリしていい感じです。

試行錯誤の革の3Wayバッグの2回目の試作の裏側ズーム

もうひとつ大きな変更として、リュックスタイルの切替時に使用していたバッグの底にあったショルダーストラップを固定するD管金具を廃止しました。

バッグ底のD管金具が床面を傷付けやすく、通常のショルダーストラップの取付位置でもリュックスタイルとして問題ないと判断しました。

また、ストラップの取外しについて試しに脱着式のアタッチメント式に変更。持ち手に通すガイド部は幅を広くとり、金具を使わず補強のためガイド部は革の下にラバーグリップのような素材を施しました。

リュックスタイルに関しては今後も金具の位置やガイド部の強度などを調整することになります。

革の3wayバッグ。リュックスタイル時には裏側のガイドにストラップを通す

3Wayバッグから5Wayバッグ?試験的に追加してみた機能

まだ2回目の試作なのでトートバッグの持ち手を肩に下げるスタイルとクラッチバッグのように脇に抱えるスタイルを追加して5Wayバッグを試みました。

トートスタイルは肩に下げられる程度に持ち手を長く、クラッチスタイルは縦長なバッグを折り曲げられるようにし、折り曲げた際にぶらりとする持ちを固定するボタンを取り付けました。

機能としては3Wayバッグで十分ですが、アウトドアやビジネスバッグでも5Wayバッグがありそうなので好奇心も兼ねて試してみようと思いました。

改良を重ねてより3Wayバッグをつくるために

2回目の試作の目的であった正面や両サイドのポケットの変更については成功。

3Wayバッグのリュックスタイルについて持ち手のガイド部はもう少し遊びが欲しいところですね。

また3Wayバッグのショルダーストラップですが、取外しに関してアタッチメント式に変更してストラップの幅も太くしたのですが、部品であるアタッチメントのサイズが大きいのでガイド部に通しづらくなってしまいました。

ワンタッチ式で取外しが便利になるかと思ったのですがガイド部を大きくしてデザイン的な問題もありますし、アタッチメント金具もそれなりにコストもかかるので当初のフック式金具の方が良さそうです。

革の3Wayバッグの2回目の試作でためした機能

欲張り過ぎの5Wayバッグ、普段使いであれば3Wayバッグが使いやすくて便利

3Wayバッグに追加で試みたトートスタイルとクラッチスタイルは少し欲張りすぎました(笑)。

クラッチスタイル対策の正面の持ち手を固定するボタン位置も微妙、本格的に5Wayバッグにするのであればデザインから全面見直ししないといけない。

5Wayバッグは3Wayより機能が多くなるので良いと思うのですが、使いこなすのは大変そうです。

日常生活でも、普通に持ち歩く手提げや移動に便利なショルダースタイル、自転車やバイクを運転したり両手を自由にできるリュックスタイルの3パターンで事足りる場合が多いので5パターンを使い分ける方が難しいと思います。

商品としてはアピールにはなると思うのですが価格も高くなり、需要もそれほど多くはないと思うので本来の3Wayバッグ開発に専念します。

試作を繰り返し革の3Wayバッグの完成に向けて

その後も3回、4回と試作は続きます。商品としての革の3Wayバッグとなるために最終的に6回の試作を行いました。

当初は3回くらいの予定でしたが、パソコンを保護するPCバッグ機能など内側の問題で課題がみつかり半年以上かかってしまいました。

3Wayバッグもそうなのですが、あらためてPCバッグという位置づけに対して考えることもあり、今後の商品の方向性にも影響を与えるところなので時間がかかってしまうのは仕方ないですね。

最初は平面のデザインで外観中心の視点しかありませんでした、試作を重ねて、立体的な構造や形状、素材の革の厚みや強さ、PCバッグの収納や内側の素材やバッグの裏地など多くの課題に直面しました。

さすがに個々の試作をそれぞれお話するというのも大変なので次回で3Wayバッグ開発の最後までお話したいと思います。(続く)

★最終的に完成した現在のurchin 3Wayバッグはこちら >>