コバや床面(とこめん)の処理は、バッグや財布、靴など革製品の品質を確かめる大事なチェックポイントです。
革は丈夫で長持ちする素材ですが、製品としての品質が良くなければ、革の端がほつれたり、形がくずれたり、汚れや痛みが目に付きやすくなります。
革製品はファッションアイテムとしても人気があるので色や形、デザインなどに注目しがちですが、長く使うためには耐久性などの品質も大事な要素です。
いつまでも愛着を持って使うために、丁寧でしっかりした作りの品質の良い革製品を選びましょう。
使いだして気になる革のほつれや毛羽立ち、革のかすや繊維くず
バッグや財布などお気に入りの革製品も毎日のように使うと汚れや傷が目につくようになります。
革は長く使って生じた汚れや傷も味わい深くなり、愛着や思い入れが強くなる魅力的な素材です。
水や湿気に注意しながら適度に休ませたり、革の変質や型崩れを防ぐために専用のクリーナーなどを使ったメンテナンスはとても大事です。
このようなメンテナンスは、購入者が素材である革を長持ちさせるためのものですが、製品として長く使うためには制作物としての出来栄え、品質に左右されます。
縫製がしっかりしている、重い荷物を詰め込んでも破れたり、部品が壊れない、衝撃に強いなど細部に丁寧な仕上げが施された革製品であれば一生使い続けることができます。
そして、日々の生活で革製品を使うにあたって気になるのが革のかすや繊維くずです。
バッグや財布など、縫製がしっかりしていて一見よさそうなものでも、内側の仕上げがよくないものは革の毛羽立ちがあったり、革くずなどが付きやすく、使いにくいものとなります。
バッグが使いづらくなる革のかすや繊維くず
バッグを使っていると内側にホコリなどがたまってしまうことがありますが、革製品ではホコリのように小さい革のかすや革の繊維くずなども目につく場合があります。
革の毛羽立ちや、ざらつきのある面からでる革のかすや繊維くずは、ハンカチやタオルなど衣類に付着しやすく、取り除くのが大変です。
また、革のかすは非常に小さいのでノートPCやスマートフォンなどの精密機器の内部に入り込んでしまったり、書類などは革の塗装が付着してしまうこともあります。
革の毛羽立ちはベロアやスエードと呼ばれる意図的にきれいに仕上げられるものがありますが、そうでない場合は、革のかすやくずが出やすくなります。
また、毛羽立ちのある面は汚れてしまうとクリーニングが大変です。
裏地のないバッグなどは内側をチェックして、革のかすやくずがでにくいものを選ぶようにしましょう。
このような、革の毛羽立ちやざらつきを抑える仕上げは床面処理や床磨きといいます。
革の裏面をツルツルに仕上げる床面処理
革の裏側で毛羽立ちとざらざらした手触りの床面
床(とこ)とは革の裏側で床面(とこめん)と呼ばれています。
革の製造工程で、バッグや靴など用途に合わせて革の厚みを調整しますが、ツルツルした表面でなく裏側を削り取っていきます。
この裏面を床面といい、表面のツルツルした方を銀面(ぎんめん)といいます。
床面は、ツルツルした銀面と違い、表面が毛羽立ち、ざらざらした手触りが特徴です。
この毛羽立ちを生かしてサンドペーパーをかけて毛足や手触りを整えた仕上げの革もあり、ハンドバッグや手袋など高級な革製品に活用されています。
ヤギや豚の革を使って処理されるものをスエード。
牛など革を使って処理されるものはベロアと呼ばれています。
ガラス板でツルツルに磨き上げる床面処理
スエードやベロアのような仕上げでなく、床面の毛羽立ちが適正に処理されてない革製品を使うと、革のかすやくずがポロポロでてきてしまいます。
このような状態のものは長い間使い込んでも、毛羽立ちがおさまったり、革のかすが出にくくなることはありません。
革製品の制作段階で、革のかすやくずが出ないように適切に処理される必要があります。
床面磨きの処理に便利なトコノール
床面をツルツルな面に仕上げて、毛羽立ちや革のかすがでるのを抑えるのが床処理の目的です。
作業は床面に専用の薬剤を塗り付けて磨き上けていきます。薬剤としては、トコノールなどが知られています。
実際の手順としては、トコノールを革の床面に均一に塗りつけてます。この時、銀面に付着しないように注意しながら作業します。
そして、トコノールを塗りつけた部分をガラス板を使い、毛羽立ちがおさまり、ツヤがでるまで磨き上げていきます。
磨き用のガラス板はレザークラフト用のものが市販されています。
またはガラス瓶でも代用でき、すべりやすい丸みのある面のガラスで磨きあげていきます。
このようにして処理された床面は、革のかすや繊維くずも出ず、滑るような手触りで光沢もでるようになります。
裏地のない革のバッグや財布などの小物を選ぶ際には、このようなポイントをチェックしましょう。
革製品の出来映えや耐久性に差をつけるコバの処理
コバは製品の品質や出来映えを測るチェックポイント
コバとは革の切断面です。重なった革の切れ端の部分を横から眺めると、切断面が木目のように見えるとので「木端」からコバになったと言われています。
レザークラフトでコバの処理はとても大事です。
革の端のほつれや耐久性といった品質だけなく、製品の出来映えや完成度にも影響を与えます。
コバの処理が不十分だと、ざらざらした手触りで、革のほつれや端がつぶれて黒ずんだりします。
コバの処理は手間のかかる作業ですが、レザークラフトでは製品の品質や出来映えを測るチェックポイントであり、作りの手のこだわりや技術などの見せ所となります。
製品作りの最後の仕上げ、コバ磨き
コバの処理は重なり合った複数の革の切断面が製品として目に触れる部分が対象となります。
従って、コバの処理の大半は製品の完成直前の最後の仕上げとなります。
重なり合った革の段差をなくして滑らかにして整えます。
きれいに処理され、光沢があるコバは見た目に美しく、製品としての耐久性も向上します。
コバの処理についてはいくつか処理方法がありますが、最もきれいな仕上がりとなるのがコバ磨きです。
丁寧さが求められるコバ磨き
コバ磨きで処理された部分は光沢があり、見栄えがとてもよくなります。
厚みの大きいコバほど仕上がりのよさがはっきりと感じられます。
コバ磨きで革製品の耐久性も向上します。
コバに傷がついたとしても、再度コバ磨きを行えば以前と同じような見栄えに修復することも可能です。
コバ磨きの作業は、紙やすりなどで重なり合ったコバの段差を整えるところから始まります。
この時、ヘリ落としといってコバの角を取る面取りなども行います。
そして、コーンスリッカーといわれる道具やヘラなどを使って磨き、最後にトコノールなどの磨き剤をつかって丁寧に仕上げていきます。
実際は職人によって、より高度で独自のノウハウを持って処理されます。
このようにして磨きあげられるコバはその製品と職人の最大のアピールポイントになります。
複数の革を重ね合わせる部分が多い、財布や名刺入れなどの小物などは必ずチェックするようにしましょう。
作り方を勉強して革製品を知る
床面やコバの処理は、製品の耐久性や出来栄えなどの完成度を高める大事な仕上げの部分です。
作り手からすれば丁寧さ、こだわり、技術の見せ所であり、使う側にとっては品質を確認するチェックポイントになります。
このようなポイントは、レザークラフトの書籍などでも紹介されています。
素材の革だけでなく、作り方の知識も身につければ、より素晴らしい革製品と出会えるでしょう。
本格的に作ることはなくても、知識として持っていたり、レザークラフトの体験教室などに参加してみるのもすごく勉強になると思います。
床面やコバの処理などで使われる道具は、レザークラフトショップで扱われており、簡単に入手することができます。
財布やバッグなど実際に自分で作り、ものづくりの難しさと楽しさを体験してみることで革製品に対する造詣を深めて見るのも良いでしょう。