革の価値を決める銀面とは

素材で勝負できる革らしい革。革の価値を決める銀面とは

よく雑誌などで高価な革製の靴やバッグなどを紹介した記事で「銀面(ぎんめん)」という単語を目にしますが銀面とは何でしょうか。

革の価値を決める銀面

銀面の名称には「吟面」など諸説あり、一節では明治時代に海外の近代的な革のなめし製法を習得するために招へいした欧米の技術者が革の表面のことをGrainと発音した際に、当時の日本人の耳に"ギン"と聞こえたことがきっかけのようです。

銀面とは簡単にいってしまえば鞣した(なめした)革の表皮にあたる部分のことです。

その表面は動物の肌のキメの細やかさ、毛穴の大きさ、形状などによりさまざまな表情(銀面模様)を映し出します。

これら銀面の中で傷などがなく、繊細できめ細やかな部分は当然ながら良質な部分であり、それ自体が高価なものとなります。

このような部分を活かし、目的に合った仕上げを行うことで製品として活用され、愛着が持てる手に馴染んだ風合いのよい革となっていきます。

銀面模様を活かした仕上げの革を「銀付き革」といいますがウレタン樹脂でコートされた「エナメル仕上げ」や銀面模様が見透せるような透明感のある「アニリン調仕上げ」などさまざまな仕上げ製法が存在します。

また、「グレージング仕上げ」という仕上げ製法では銀面の光沢を増すためにガラス玉で重圧したり、「カゼイン仕上げ」では色の艶・深みを増すために新鮮な牛血や卵白を用いるものもあります。

銀面を上手く使う工夫

このように革の価値を決める銀面ですが、キメが繊細で傷や血筋の有無などの表面的な要素はとても重要になります。

一方で、素材として加工するときの強さ、張り、柔らかさ、厚みなども重要であり、首や背中、腰まわりなど動物の部位によって革の質も異なってきます。

首まわり、肩、背中、お腹、腰まわりなど動物の皮は部位によって、張り、強さ、厚みはそれぞれ同じではありません。

また、牛や馬など一頭の動物から採取できる面積は限られています。

革のバッグを例にあげると、ランドセルのフタのように、もっとも目立つ場所や開閉の回数や頻度が高いところは一定の厚みや張りがある部分の革が使われます。

このようにして適材適所で用途に合わせた使い方をすることはとても重要です。

バッグや靴など長い期間使うことが多い革製品では「銀浮き」「銀割れ」といわれる事象の発生に影響します。

革の価値を下げる「銀割れ」

銀付き革の製品を長年使っていると動きや負荷の激しい部分に小さくシワのようなものが浮き出たり、割れたようになったりすることが見られます。

これらは「銀浮き」「銀割れ」といわれ、仕上げを施した表面と革の表層部より内側の層の結合が緩んだり紫外線など環境の要因で革タンパク質が変質して過剰に結合した状態のことをいいます。

銀浮き・銀割れこれらは革の価値を下げるため仕上げ時にはこのような革を出荷することはありませんが、しっかり仕上げされている革でも靴やバッグなど製品となり長期に渡り使用していると目につくようになります。

愛着のある革製品を守るためにも型崩れを防いだり、湿気に注意を払ったり、専用クリームで汚れを落とすなどメンテナンスを心かげましょう。

銀付き革の素晴らしさ

革の仕上げの一つに「型押し」と呼ばれ、専用の機械でワニ皮のようなクロコダイル調の模様や細やかなシワを付け革素材に独特の質感を表現するものがあります。

また薬剤処理で型押しと同じように革の表面にさまざまな表情を付けることができるものもあります。

銀付き革は、このような型押しや、薬剤の処理で意図的にシワや模様を付けたりするような加工はせず、素材の持つ美しさや風合いといった本来の特性をアピールすることができます。

銀付き革は素材で勝負することを認められた革、革らしい革なのです。