革のバッグに播州織の裏地、オール兵庫ブランド誕生秘話

始まりは革のバッグに触れてもらうこと

ノートPCを収容する工夫を凝らした革のトートバッグ

革のバッグの「moe」という名前はまだ決まっていませんでしたがPC用の3Way、トートバッグの開発は進んでいました。試作のバッグが出来上がると、友人や交流のあるデザイナー、エンジニアのみなさんの反応をみたり、意見を求めたりして商品開発の参考にしていました。

PCが収納できる革のバッグを事業にしようと思ったきっかけは、大阪や神戸でのデザインやプログラムの勉強会などで交流のある人たちと話する中で革に興味ある人が多く、またPCやタブレットを入れて持ち歩くバッグに関して気に入ったものがないという話があったことから始まります。

彼らはmoeにとっては潜在的なメインのターゲットになる存在。なのでセミナーや勉強会、Storyboardの業務での打ち合わせなどで外出する時には試作の状態でも革のバッグを持って行きました。

試作品のバッグなのでデザインや大きさなど色々な意見がありました。素材である革に関しては柔らかさ、手触りなどまずまずの反応。バッグに関しても重さをあまり感じることなく丈夫であるという評価もいただけるのは試作であっても嬉しいですね。

女性目線で気付かされたバッグの裏地

鮮やかな裏地のmoeの革バッグ

その中で面白いと思ったのは男女でチェックするポイントが異なっていることでした。男性が収納のポケットやチャック、持ち手など機能面でも表面・外部を中心としたチェックが多いのに対して、女性は内側のポケットなどの収納性まで細やかにチェックしていました。このあたりはバッグを持ち歩く機会が多い女性の方がしっかりした基準を持っているんですね。

開発する立場からすると内面の細やかなポイントを指摘してくれる女性の意見は貴重で、特に裏地に関する指摘が印象的でした。

バッグ内側の小物の取り扱いに関する意見に加え、「明るい色の裏地がいい」「カラフルなストライプ柄が好き」「花柄の裏地がいい!」などの裏地に関する意見が多くありました。裏地に関しては全く考慮してなかったというか、バッグの外観や機能ばかり意識していたのでなるほどと感心させられました。

その中で「どうせなら裏地が選べるのが良いかも」という意見があり周囲の反応も良かったのでサービスとして考えてみようと思いました。

受注生産だから出来るこだわりのサービス

というのも商品であるバックの開発で連携先を探していた際、実際に商品になった場合にはロット単位で数十個まとめて発注する契約が多く、一度に大量の在庫を抱えるというのはかなり厳しい条件でした。

「とりあえずバッグを作ってから考えてはどうですか」という試作を受けてくださった工房さんの提案で試作を開始したわけですが、生産体制についてはオーダーが発生する度に製造する受注生産方式がベストだろうと考えていました。商品の在庫を持つことなく運営できるので小規模事業者として良い体制でした。

そのような状況なので何かオプションやサービス的なものがあればと思い考えていたのですがバッグをオーダーする時に好みの裏地を選択できるというのは目からウロコでした。

外観が同じ革のバッグでも内側はちょと人とは違う。量産品でなく自身が選んだオリジナルの仕様で作られた革のバッグ。見えないところが人と違う。男性でいえばスーツの裏地にこだわるような感覚でしょうか。おしゃれで、オーダーした本人のこだわりが反映され、大事に使ってくれると確信できそうな革のバッグって素晴らしいと思いました。

革のバッグに合う裏地を求めて

たくさんの裏地がある播州織の卸問屋

でも、どこで、どのようにして裏地を調達すればよいか全くわかりませんでした。ネットで手芸用品などを取り扱うショップで生地などを調べました。様々な色や柄があるのですが種類が多すぎてどれが良いのか・・・。そもそもバッグ専用の裏地というようなものはなく、材質や厚みもそれぞれでした。

ネットで調べていてもイメージがわからなかったので実際に手にとって見たいと思い地元の手芸用品・生地取り扱いの専門店に足を運んで物色することにしました。広い店内は女性ばかり。素材、色、柄など目についたものを触ってみたのですが、個々に違いがあるのは感じられました。30分ほど物色していたのですが疲れて目まいがしてきました(笑)。

革のバッグの試作をお願いしている工房さんに相談したところ西脇の播州織の提案がありました。播州織は200年以上の歴史がある西脇の名産品、姫路の革とコラボすればオール兵庫ブランドとしてアピールしやすいので妙案だと思いました。

バッグの素材にするなら小さいサイズで購入するよりまとまった量を一括で買い付ける方がコスト安ということで播州織を扱う問屋さんをあたることにしました。

姫路の商工会議所を通じて西脇の商工会議所にメーカーや問屋の紹介を依頼。卸し問屋を数社に絞り込みアポを取って西脇市に乗り込みました。播州織も姫路の皮革産業と同じように工場や卸業者などが集中しているようで、複数のアポ先の移動にそれほど手間はかかりませんでした。

アポ先の問屋さんには丁寧に対応していただきました。バッグに限らず、衣服や雑貨品などの企画開発で私のように買い付けにくる人は少なくないようです。革のバッグの裏地に播州織を使おうと思った経緯をお話して関心を持っていただけました。

伝統のある西脇の播州織

カラフルなバッグの裏地

播州織に関しては不勉強で、現地で色々と教えていただきました。播州織は一本の糸を作るところから始まる、つまり「先染」という技法で先に糸を染め上げるのが特徴とのことです。

模様や色、柄など様々な種類はありますがイラストやキャラクターのような柄ものはなく、生産に関してもロット単位または在庫限りのものが多く、追加の生産や入荷などはわからないということで購入者にしてみれば一期一会的な出会いなので機会を逃さず、気に入ったものはすぐに購入するほうが良いということでした。

それなら自社ブランド専用のオリジナルを作ればと思うのですが、テスト用でも長さにして数キロメートル程度の生産が必要であり、ロット単位でかなりの量を作ることになるので大企業クラスでないと難しいということでした。

自社ブランドとしてはオリジナルの生地があれば・・・と思ったのですが流石に無理。それならば少量生産を逆手に取って定期的に生地の買い付け・入れ替えを行えばバッグをオーダーしていただくお客様それぞれの個性やこだわり感がより鮮明になっていいと思いました。

それでは早速、生地を物色ということなのですが卸問屋なので様々な種類のものがあるのでスタッフさんにmoe(当時はまだ名前は決まっていませんでした)でイメージする色や柄などをお話して複数のサンプルを取り上げていただきながら選んでいきました。色や柄がよくても薄かったり、表面が滑りやすいものもあれば毛羽立っていたりなど様々。

サンプルを物色して数種類の生地を購入。量販店などでは革のハギレのようにきまったサイズなのですが、卸問屋では1つの生地につき幅1メートル程度で長さ数十メートル単位で購入。数十メートルというとかなりの額になるイメージなのですが単価が1メートルあたりでは量販店より安く仕入れる事ができました。

姫路の革と西脇の播州織のコラボ、オール兵庫ブランドの誕生

裏地が変わると雰囲気が変わる革のバッグ

姫路に戻り生地を仕入れ早速使ってみました。生地は3種類を用意。革の色も定番として決まっていたレンガやキャメル色の革を使いました。同じバッグでも革の色が異なれば雰囲気は変わりますが、異なった裏地でバッグを開いた時の違いはよりインパクトがあるように感じました。

工房さんの感想としては、それぞれの生地で色・柄とは別に厚みや生地の「コシ」の違いで加工しやすさも違うようですが問題ないということでした。

これまで裏地に関しては全く意に介さなかったのですが、女性目線での裏地の指摘から生まれた播州織と姫路の革のコラボ、そしてオーダー時の裏地選択のサービス。革のバッグを大事できるこだわりのサービスが一つ生まれました。