3Wayバッグに続き、PCやタブレットが入る革のトートバッグの開発です。
異なるタイプで人気のある3Wayバッグとトートバッグはオープン時には商品化したいバッグです。
機能的だった3Wayバッグに対して、トートバッグは柔らかくてかわいいデザインを考えました。
メインのPCバッグの出し入れは15インチサイズのノートPCの収納を意識して設計。
ステッチ風の正面ポケットやバッグの底の鋲(びょう)のかわりに革パッチをあてて、倒れない自立したトートバッグなどのアイディアがはまり、イメージに近い設計ができました。
そして、トートーバッグの開発中にお好みの裏地を選択できるカスタマイズサービスのアイディアが生まれました。
レザークラフトでは定番のトートバッグ
トートバッグはバッグの中でも定番中の定番。
トート(tote)は「運ぶ」という意味で、アウトドアで水や氷を運ぶためのバッグでした。
そしてアメリカの大学生たちが、通学用のバッグとして使うようになり、ファッションアイテム化しました。
バッグの口が広くて荷物の出し入れがしやすく、ざっくりと荷物を詰め込めるトートバッグ。
今やトートバッグはアウトドアに限らず、一泊程度の小旅行やレジャーでも使われています。
デザインもカジュアルで汎用性があり使いやすく、スーツに合うビジネスバッグ仕様のビジネストートも登場しています。
トートバッグはファッションアイテムとしてレディース、メンズに支持され、プライベート用や仕事や通勤・通学用に使い分けて複数所有する人も少なくありません。
レザークラフトでも人気で、専門の雑誌では必ずといっていいほど革のトートバッグが登場します。
作り方を解説したり、革などの素材を切り抜くための型紙が本の付録としてついているものもあります。
PCが入る本革のトートバッグを作る
人気のあるバッグですが革のトートバッグでパソコンが入るPCバッグ専用は多くありません。
丈夫で長く使える革のトートはバッグの定番アイテムなのでmoeのラインアップに加えたいと思いました。
トートバッグのデザインも専門のバッグデザイナーに依頼するあてもなく、私自身がデザインすることになりました。
3WayバッグでのPCバッグ開発の経験もあり、トートバッグの方が構造的にシンプルだと思ったので、それほど苦労するとは思いませんでした。
普段使いができる、柔らかくて、かわいい革のトートバッグを考える
トートバッグのデザインで考えたのは、おしゃれで、かわいいのに加えて、意識したのは「柔らかさ」。
使いやすくて普段使いしたくなるようなバッグにしたいと思いました。
デザインのイメージをスケッチする前に、キーワードを紙に書き出し、最初に浮かんできたのは「ふわっと」という柔らかい感覚をイメージする言葉でした。
いずれもmoeのブランドのイメージに近いキーワード。
実は、革のバッグの事業を考えたときに最初に浮かんだのがトートバッグでした。
歩きながら取り出せて使いやすいバッグのマチのポケット
外観やポケットの仕様などは雑誌やインターネットでいろいろと研究しました。
街のカバン屋さんやPCショップのPCバッグのコーナーでバッグを手にとって見たり、街中で男女問わずバッグを持つ人を観察しました。
いろいろなバッグを見て、バッグのマチ側(側面)にポケットのあるトートバッグって少ないように思いました。
トートバッグは肩に引っ掛けて歩くことが多いのですが、バッグのマチにスマートフォンや定期入れなど出し入れの頻度が高い小物などが入るポケットがあれば使いやすいと思いました。
あれこれ思いながらデザインを開始。素材となる姫路の革の柔らかさと、かわいいバッグをイメージして丸みを意識しました。
手描きスケッチをもとにAdobeのイラストレーターで設計図を作成。バッグの大きさはA4サイズで雑誌が入るもの。
自身の所有するノートPCに合わせて15インチサイズのノートPCが入る横幅で、少し厚めの専門書などが十分に入るマチ幅(厚み)は確保したいと考えました。
最終的にB4サイズくらいの大きさになりましたが、資料を元に実現可能かどうかを工房さんに相談し、修正を加えてトートバッグの最初の試作品が完成しました。
最初のトートバッグの試作。鋲よりも安定感のある革のパッチ
待望のトートバッグ試作第一号。かなりイメージに近いものが出来上がりました。
スマートフォンや定期券などを入れる両サイドのポケットも使えそうです。
最初の試作で、キャメルやレンガ色といったmoeのレギュラーカラーの革ではありませんが、シンプルな横長トートの外観形状はそれなりに手応えがありました。
バッグ上部のフタの部分は口を締めるマグネットのボタン式。持ち手はハトメ金具で3段階の調整方式にしました。
調整しないタイプのものも考えましたが、冬にコートなど厚着をしても肩にかけることができるように調整機能が欲しいと考えました。
今回の外観のチェックで一番良かったと思ったのは、バッグ底面に金属製の鋲の代わりに革のパッチをあてたことです。
倒れない自立したバッグというのはビジネスバッグでは重要な条件のひとつです。
商談や就職活動で相手と面談したときに、バッグがへたって床に転がってしまうのはビジネスマナーでなくてもまずいですよね。
試作ではバッグの底に鋲でなく革のパッチをあてています。
金具の鋲は接地面が点なので圧力が集中して、床に傷が付く場合があります。
今回のように板状のパッチなら面積が広いので圧力が分散され、床に傷はつきません。
さらに、接地面が広いのでバッグの自立に対して安定感を増してくれます。
ファスナー無しのトートバッグ。かわいい感じの正面のポケット
予想より出来が良かったので、moeの立ち上げで相談させていただいている地元の商工会議所の方に見ていただきました。
悪い反応ではなかったのですが女性の職員の方から、正面右側の金具のファスナー式のポケットが少し安っぽく見えるという指摘がありました。
確かにバッグ全体に対して、ファスナーの部分がすごく無機質な感じがしました。
工房さんに相談したところ、金具ではなくバッグ正面を2分割した大きなパッチのようなポケットの提案がありました。
実際のポケットのサンプルを見せてもらい、良さそうな感じだったので、その案を採用。
両サイドのポケットの深さの調整など、幾つかの改修ポイントも検討して2回目の試作を行いました。
トートの外観デザインの完成と残されたPC収納の課題
2回目の試作でトートバッグの外観はほぼ完成。
最近のスマートフォンなどはサイズが大きいことを考慮して両サイドのポケットも少し深くしました。
正面を2分割して取り付けたポケットもステッチが入り、シンプルでかわいい感じになりました。
ファスナーの金具がなくなっただけで、バッグの表情や雰囲気が柔らかくなったような気がします。
持ち手の長さを調節する部分以外は金具がなくなったのでよりPCを傷つける要素も少なくなりました。
開発中に生まれた播州織の裏地のカスタマイズサービス
2回目のトートバッグの試作の間に、好みの裏地を選択できるというオーダーメイドサービスの原案が生まれました。
そして、3回目の試作で姫路の革 & 西脇の播州織でつくるオール兵庫ブランド仕様のバッグが完成しました。
名入れのや革へのプリントやレーザー刻印は当初より考えていたのですが、裏地のカスタマイズについては開発中にアイディアとして生まれました。
オール兵庫ブランドのオーダーメイドサービスについては、また別の機会にて取り上げたいと思います。
2回目の試作でトートバッグの外観は完成。しかしまだノートPCやタブレット収納の機能の開発が残っています。
3Wayバッグをトートバッグより先に開発したのは、最初にPCバッグとしてのPC収納部まわりの仕様を抑えておきたいと思ったのと、トートバッグ開発にノウハウを利用したいためでした。
3Wayバッグ開発以前からトートバッグで実装したいと思っていたPCやタブレットの収納機能。
詳しくは次回にてお話したいと思います。(続く)