革素材としての和牛について
moeとして革のバッグ事業を立ち上げる際に周囲の人からブランディングの話になって神戸牛とか和牛の皮でバッグをつくってアピールしたらという話がありました。
確かに、和牛は食肉として高品質なブランドイメージがあるので和牛の皮で鞣し工程で加工された革でつくったバッグや靴なども同様のイメージを持ちやすく、ブランディングやプロモーションなどは優位に展開しやすいと思います。
加工が難しい霜降り和牛の”サシ”
しかし実際のところ和牛の皮は革素材として利用されることは多くありません。
原料となる皮(原皮といいます)はアメリカを中心とした世界各地から輸入されています。
それらの皮と比較して和牛は頭数も少なく、体が小さいので素材として効率がよくありません。
また和牛は”サシ”という脂肪が多く含まれ、高品質の和牛ほどいわゆる”霜降り”といわれるように肉全体にきめ細かく脂が含まれます。
この脂が和牛の肉の部分だけでなく皮膚にも多く含まれ加工が難しいとされています。
また皮の厚みが薄く、特にお腹まわりは部位の中でも極めて薄いようです。
更に、食肉に加工する際の和牛の解体処理で皮を剥ぎ取るわけですが、傷もついてしまうので革素材としてはさらに利用効率が悪くなってしまいます。
最近では加工(鞣し)技術も向上し、松阪牛を使った革素材もあるようですが松阪牛の頭数も多くはありませんのでやはり高価なものになってしまいますね。
成長度合いや性別で変わる牛皮の種類
バッグや靴、革ジャンなど多くの革製品は牛革で作られたものが多いと思います。
多くは海外の牛皮が使われていますが成長度合いや性別などによりそれぞれ革の質も異なります。
バッグや靴などそれぞれの革製品に適した品質の皮を選ぶ。素材選びはこの段階から始まります。
キメ細かく柔らかいカーフスキン
カーフスキンは生後6ヶ月の子牛の皮。子牛なので体は小さいですがきめ細かく、そして柔らかいのが特徴です。高品質で小さい皮なので高級な革製品などに使われます。
カーフスキンより強くて厚いキップスキン
キップスキンは生後6ヶ月から2年くらいになる牛の皮。きめの細やかさなどはカーフスキン程ではありませんがカーフスキンより強く厚みがあるのが特徴です。
大きくて使いやすいステアハイド
ステアハイドは生後2年を経過した雄牛の皮。生後3ヶ月から6ヶ月の間に去勢されます。
厚みも均等で去勢されない雄牛の皮(ブルハイド)と比べると皮が柔らかくなっています。体も大きく様々な用途に使われる皮です。
出産した雌牛の皮、カウハイド
カウハイドは生後2年以上経過した出産を経験した雌牛の皮です。キメも細かく、ステアハイドよりは厚みはありませんが柔らかいのが特徴。
固くて丈夫なブルハイド
ブルハイドは生後2年を経過した雄牛で去勢されない牛の皮。牛革の中では一番固くて丈夫。活動的なため傷も多いのが特徴。主に靴底などに用いられます。