同じ革でも違う?ヌメ革とクロムなめしの革

大地の色に染まるヌメ革のタンニンなめし

革製品、特にバッグや財布などで人気のあるヌメ革。

moeの革のバッグでも「ヌメ革のバッグですか」と聞かれる事があります。

牛や馬などの皮をバッグや靴の素材として利用するための加工方法を鞣し(なめし)といいますが、ヌメ革とは幾つかある鞣し処理の中の一つで製造された革です。

現在では大きく分けてヌメ革のタンニンなめしとクロムなめしという手法の2つに代表されます。

大地の色に染まるヌメ革のタンニンなめし

革のなめし剤であるタンニンの水槽に革を浸す

ヌメ革とは植物の渋(しぶ)に含まれるタンニンという成分でなめした革で染色や塗装がされてない革のことをいいます。

タンニンを多く含む植物は多くあり、最近では南アフリカ産のミモザ、南米のケブラチヨ、ヨーロッパのチェスナットから抽出したチェスナットなどの植物から抽出したものをタンニン剤として使用しています。

なめし方法としてはそれぞれ濃度の異なる大量のタンニン剤でいっぱいにしたプールのような大きな水槽(ピット槽)に皮を漬け込んでタンニン剤を浸透させていくのが特徴です。

タンニン剤は茶色に近い色で、水槽に長期間漬け込んだ革は薄い茶色に染まった色になります。

木や植物の皮や根、果実などから抽出したタンニンでなめされた革はまさしく大地の色に染まった優しくて素朴な革となります。

風合い、変化を楽しめるヌメ革の特徴

他のなめし処理の革よりも時間をかけながら使い込み、革の風合いを楽しめるのがヌメ革の特徴。

エイジングといわれたりしますが、最初は固いというか少しごわごわした感じがありますが次第に柔らかくなり馴染んできます。

また経年変化の度合いも激しく、使いだしてから一年もすると味わい深い色に変化していきます。

一方でクロムなめしの革と比較して革独特の匂いを持ち、厚みがあり重く、植物繊維を多く含むだけに吸水性(水に弱い)があり火や熱にも弱い面もあります。

そのため日々の手入れが必要となります。

またクロムなめしと比較して製造コストが高いということもあり生産量も多くはありません。

少量で、風合いを味わえる素材であることが希少価値となり、これがヌメ革が支持される要因かもしれません。

生産性の高いウェットブルーのクロムなめし

クロムなめし、ウエットブルー

植物から抽出したタンニン剤に対して塩基性硫酸クロム塩という化学薬品を使ってなめし処理を行うのがクロムなめしです。

タンニンなめし比べて処理時間が短く、生産量が世界の革の8割はクロムなめしの革といわれています。

タンニンなめしで水槽に漬け込んで薄い茶色に対してクロムなめしで処理された革はウェットブルーと呼ばれています。

生産量も多く使い勝手がよく様々な革製品に利用されています。

強くて使いやすいクロムなめしの革の特徴

タンニンなめしと比較して薄くて軽いのが特徴です。

染色時の発色性もよくカラフルな素材として利用しやすいので、さまざまなカラーバリエーションに着色された革が多く見られます。

また強度もあり熱や火に対する耐火性にも優れています。

一方で、使い込んで風合いなどの変化を味わうという部分ではタンニンなめしと比較して乏しく、手入れをしてかわいがるということでは物足りないかもしれません。

その他の皮のなめし製法について

歴史と伝統のある白なめし

植物を使ったタンニンなめしや化学薬品を使ったクロムなめしの他、さまざまな皮のなめし処理が存在しています。

真っ先に取り上げなければならないのは、日本の皮革産業の発祥の地、姫路に古くから伝わる「白鞣し」(しろなめし)です。

古代の朝鮮半島より伝わっとされており、歴史は古く奈良時代初期に編纂された「播磨風土記」に記述されています。

その製法は、塩漬けされた毛の付いた皮を姫路に流れる市川の水に皮を浸し、皮の表面に発生したバクテリアで脱毛させていきます。

そして塩と菜種油で人力にて揉み続け、川原にて天日に晒し、薄乳白色の革に仕上げていきます。

戦国時代には豊臣秀吉が織田信長に献上するなど、武具や馬具に使われ明治時代までさかんに行われていました。

しかし、白なめしは大量生産が難しく、時代とともにタンニンなめしやクロムなめしが主流になっていきました。

タンニンなめしとクロムなめしの組み合わせたコンビなめし

また、タンニンなめしやクロムなめしのそれぞれの特長を活かしたなめし製法もあり、コンビなめし、または混合なめしといわれています。

タンニンなめしの風合いとクロムなめしの強さを持ち合わせたハイブリッド型のなめしです。

特徴的なのは、クロムなめしとして処理されたウェットブルーの皮から、なめし処理で使われたクロムを抜き取り(脱クロ処理)、その後にタンニンなめしを行うという製法です。

クロムを抜くといってもゼロになるわけではなく、タンニンなめしとクロムなめし両方の特性を持つことができ、カバンやグローブなど幅広く利用されています。

タンニンなめし、クロムなめしなど、いずれの製法でもそれぞれの皮のなめし処理には特徴があります。

最近は技術革新とともに、品質の向上やこれまでにない個性のある革も数多く誕生しています。

それぞれの素材に触れながら新しい物を取り込み、素材を最大限生かしこれまでにない革のバッグを作る。

日本一のタンナーの街、姫路で活動するmoeの最大の強みにしたいと思います。