革を切る専門の片刃の刃物、革包丁
これは革包丁といわれる刃物で、皮革の製造現場やレザークラフトで革を裁断するのに使われます。
革包丁の刃は木を削るノミのような形で、幅が広い片刃が特徴です。
革を裁断するのに使われる革包丁ですが、裁断する際に切り口が垂直になるようにして使うのが重要となります。
切り口が斜めだと使いにくく、バッグや財布など革製品で評価が低くなりますが、製品になる前の素材でも評価は下がります。
そのため、片刃であること考慮して革に対して刃を少し斜めにして使うのがポイントなります。
縁裁ちで使われるタンナーの革包丁
この革包丁ですが、タンナーでは縁裁ち(えんたち)包丁ともよばれています。
縁裁ち(えんたち)と耳にすると、縁起(えんぎ)の悪いイメージですが、革の端の部分、つまり縁(ふち)をさします。
皮革の作業工程で、革の端の部分でほつれたり、厚みのないところや硬くなったところを取り除く作業があります。
いわゆるトリミングで、バッグや靴など革製品に加工する際に使いにくいところを除去して整えていきます。
このトリミング作業が縁裁ち(えんたち)で、使われる刃物は縁裁ち(えんたち)包丁とよばれたりすることがあります。
集められた縁裁ちくずの再利用
革のトリミングで除去された革の切れ端を、縁裁ち(えんたち)くずといいます。
集められた縁裁ち(えんたち)くずは、処分されるものもありますが、一部は用途別に再利用されます。
大きいものはレザークラフトのパッチワークに利用されたりします。
【雑記】子どもの遊び場、縁裁ちくずのジャングルジム
筆者の子どもの頃は、タンナー業の最盛期で多くの工場が稼働していました。
それらの工場からでる縁裁ちくずは一箇所に集められ、山のようになっていました。
川沿にあった縁裁ちくずの集積場は、河原で鬼ごっこをしたり、石投げをする子どもたちの遊び場でした。
細長い縁裁ちくずを集めて繋ぎ合わせロープを作ったり、小さいくずを集めてボールを作りました。
また廃材や古タイヤを拾ってきて、縁裁ちくずを駆使してジャングルジムや秘密基地をつくって遊んでいました。
草むらに寝転がり革くずを取ろうとする子どもたち
夕方5時になると、近くの工場から鳴り響く終業のサイレンが家に帰る時間を知らせてくれます。
縁裁ちくずからでる革の繊維くずは、衣類に着くと取るのがとても面倒です。
そのまま家に帰ると親に叱られてしまいます。
そんなとき、みんなで河原の草むらで草にこすりつけるように寝転がり、革くずを取ろうとしていました。
当時は、そんなことで服に着いた革くずがとれたような気になっていました。
実際に取れたかどうかわかりませんが家に帰るとよく怒られていたような気がします(笑)。