一般の革工房ではバッグを作る革素材は、色や厚みなど自分たちが制作するものにマッチするものを専門の卸問屋や小売店で調達します。
ロット単位で大量に制作するメーカーや工房ではまとまった数の革が必要なため、自分たちの制作条件にマッチしたスペックで革を発注する場合もあります。
数は多くありませんが、moeでは自分たちのバッグ作りの革をタンナー工場に直接発注しています。
日本一の生産量を誇る姫路で活動するmoe。
moeのバッグ作りに使う革は地の利とネットワークを生かし、革素材の厚みや色など品質にこだわったオリジナルスペックの革素材です。
ウェットブルーの皮で品質をチェック
moeではタンナー工場でウェットブルーの皮から自分たちが使うものを選別して発注しています。
革は牛や馬、羊など動物の皮をなめし加工して製造されますが、背中やお腹周りなど部位によって厚みや柔らかさも異なります。
原料となる原皮(げんぴ)は海外から輸入されますが、現地の気候や動物の健康状態で皮の状態も異なり、飼育時の傷などもあります。
したがって、仕上げられた個々の革は、傷やシワ、血筋などの多いものもあれば少ないものもあり、全てが同じ状態ではありません。
革製品として加工するには使いづらい部分もあり、効率よく革を使い切るのが難しいものもあります。
少しでも効率よく革を使うためにmoeでは原皮から毛や脂肪などを取り除き、なめし処理されたウェットブルーと呼ばれる皮をチェックしていきます。
皮から革に生まれ変わった瞬間のウェットブルー
ウェットブルーとは脱毛処理され、クロムという鞣し剤に染まった淡い青色の革で「皮」から「革」に生まれ変わった直後の状態のものです。
原皮の段階では毛や汚れ、血液などが付着しているので傷や血筋などはチェックできません。
このため、表面がきれいになったウェットブルーで表面の傷や血筋、革の質をチェックします。
革の表面は銀面(ぎんめん)といわれ、傷や血筋のほか、毛穴の大きさやキメの細やかさなどをチェックします。
そして選別したウェットブルーに厚さや仕上げの仕様を指定してタンナーさんにお願いします。
下地の染色で色の異なる革の在庫調整
moeではキャメルやレンガなど色別の革を効率よく管理するために、仕上げ塗装の一歩手前の段階で在庫として管理します。
moeで扱うカラーは、キャメル、レンガ、バーミリオン、そしてチャコールグレー。チャコールグレーを除き、黄色〜赤系統で濃淡も明るく淡い色合いです。
そのためウェットブルーから染色の工程で下地色として淡いベージュ系で処理し、その時の革の在庫状況に応じた塗装〜仕上げ処理を行います。
トートや3Wayバッグ、ショルダーバッグなどバッグにより人気のある色が異なります。
それぞれの商品でオーダーが集中する時期が異なることもあり、各色の革を同じ枚数で保管すると特定の色の革の在庫がだぶついてきます。
革は長い期間を経過すると水分がなくなり乾燥してしまいます。また、紫外線や酸化の影響を受け色合いも変化します。
このため長期保管による素材の劣化を防ぐために、必要に応じてそれぞれのカラーの革の塗装・仕上げを行います。
革の塗装・仕上げを左右する染色の下地色
革の塗装・仕上げで下地となる染色のカラーはとても大事です。
下地色が黒や紺といった明度が低く濃い色の場合、黄色や赤といった明るい、淡い色合いの仕上げは難しくなります。
逆に白やベージュのような明るくて淡い下地色なら黒や紺のようなカラーは問題なく仕上がります。
革の塗装・仕上げ専門の職人さんとも相談した下地色のベージュは、キャメル、レンガ、バーミリオンいずれのカラーでも問題なく仕上がります。
このように塗装・仕上げ処理の前段階の状態で革を保管しておき、バッグのオーダーの状況に応じて必要な色の革を仕上げて素材を管理しています。
まさに、姫路で活動し地元のタンナーと連携できるmoeならではの革の管理方法です。